全損保険の2025年問題

何年か前に、全損保険の2025年問題というような記事が出ていました。

その記事には、生命保険の通達が改正される前に駆け込み加入した全損保険の解約返戻金のピークが2025年あたりに来ると書かれていました。

今年は2025年のため、対応に困っている方もいると思われます。

保険の出口戦略

解約返戻金のピークが来ているとして、何もしないでいると解約返戻金が大幅に減ってしまうため、保険契約をそのまま継続する選択は無いと思います。

しかし、対応させる費用もないまま解約してしまうと、益金計上された解約返戻金に対して法人税を払うことになるため、どうにかしてこれを避けたいという話になります。

一般的に言われている対策には以下があります。

払済保険にする

通達改正により、払済保険に変更しても、同じ種類の保険なら益金や損金に算入しないことになりました。

仮に、解約返戻金を高い水準で保ったまま、同じ種類の払済保険に変更できるとすれば、とりあえず先送りにできるため、これを最優先で検討すべきです。

しかし、保険会社や保険の種類によっては、解約返戻金が減ってしまう、同じ種類の払済保険に変更できないといった問題が生じるため、他の選択肢を検討する必要があります。

失効

保険料の支払いを意図的に行わないことで、保険契約が失効して、2~3年ほどは解約返戻率を維持することができる場合があります。

ただし、保険料自動振替貸付制度の適用がある場合、この手段は使えません。

退職金に充てる予定の場合、この手段が使えたとしても、失効を維持できる間に退職しないと退職金に充てることができません。

5年~10年後くらいの退職を想定している場合は、他の選択肢を検討する必要があります。

解約だけして納税する

解約して益金算入されたとしても、3割ほどを納税して7割ほどは預金として残ります。

退職金に充てる予定で、まだ退職できなかったしても残り7割は退職金として払うことができます。

3割の納税をどうしてもしたくない場合は、別の選択肢を検討することになります。

違う保険に入る

その会社にとって本当に必要な保障があるとすれば、選択肢としてはありだと思います。

全損保険は通達改正により無くなっているため、再び「課税の繰り延べ」をすることはできません。

退職金のような用途が決まっている場合に、他の保険に入ることで本来の用途に充てる資金が無くなってしまう可能性はあります。

部分解約しながら設備投資

固定資産を購入しても、購入初年度で全額を費用計上できるケースは非常に限られてきます。

益金算入と損金算入が対応しない場合、法人税を払うことになります。

退職金のような用途が決まっている場合に、他の保険に入ることで本来の用途に充てる資金が無くなってしまう可能性はあります。

オペレーティングリース

検索すると、保険の出口戦略としてオペレーティングリースを紹介するページも出てきます。

解約返戻金は1年で益金計上されるのに対し、オペレーティングリースは2~3年かけて損金計上するため、益金と損金を対応させるのが難しいという問題があります。

さらに、為替リスクや航空会社の経営破綻などにより、支払額の全額が戻ってこない可能性もあります。

当所の保険の目的が退職金だった場合、オペレーティングリースが現金化されるタイミングと将来の退職のタイミングを合わせるのが難しいという問題もあります。

結局は、その場しのぎの対策になってしまう可能性が高いと思います。

それでも「単なる課税の繰り延べ」をしていて、「再び課税の繰り延べ」をしたい場合には、選択肢としてはありだと思います。

分掌変更して役員退職金に充てる

代表取締役を退任して退職金を受け取り、会長や相談役として会社に関わることも選択肢としてありますが、退職金の否認リスクが高いため、あまりお勧めできません。

組織再編で別会社を作り、退職して新会社の役員になる

もともと退職金に充てる予定で、経験を積ませたい後継者がいる場合は、親会社を設立して社長に就任し、今の会社は退職するなどの選択肢があります。

保険加入の当所の目的は何だったか?

いろいろな選択肢がありますが、そもそもなぜその保険に入ったかによって、今回どのような選択をするかも変わってくると思います。

節税のためになんとなく入っていた場合(無目的)

やっていたことは「単なる課税の繰り延べ」ですので、何らかの資金需要でもない限りは、再び繰り延べしたいという発想になりがちです。

しかし、通達改正で再びの繰り延べが難しくなっています。

  • 払済や失効で先送りにできるなら先送りにする
  • 別の保険に入る
  • オペレーティングリースなどで再び繰り延べる
  • 解約だけして納税する
  • 対応させる費用を作る

解約返戻金の用途が決まっていた場合

用途が決まっている場合は、無目的の場合と比べて優先順位も変わってくると思います。

  • 今回のタイミングで可能なら本来の用途に充てる(それができなければ以下)
  • 払済や失効で先送りにできるなら先送りにする
  • 解約だけして納税する(7割は本来の用途に充てることができる)
  • 違う用途に充てる(違う保険、資産購入など)
  • オペレーティングリースなどで再び繰り延べる